市民の皆さまへ

「脳科学ひろば」とは
人と社会と脳科学をつなげるためのページです。

現在、脳科学研究が急速に進展しており、「物語のなかの話でしかない」と思っていた技術が真剣に研究され、実現されつつあります。その成果は、遠くない未来に医療をはじめ広く社会に普及していき、私たちにとって身近なものになっていくことが予想されます。夢のような生活が実現するかもしれませんが、その一方で、大きな問題も生じてしまうかもしれません。

すこし考えてみましょう。
もしも「どこでもドア」があれば、それはそれは夢のような生活を送ることができます。通勤・通学の満員電車は無縁になり、遅刻することもかなり少なくなることでしょう。 しかし現実的に「どこでもドア」を社会に普及させるとしたら...非常に多くの問題が生じてしまうことが予想されます。プライバシーの問題はどうなるのか。窃盗や不法侵入をどう取り締まるのか。飛び出し事故をいかに防止するのか...倫理的にも、法的にも、社会的にも、問題が多そうです。

なお。
研究成果の社会的応用の問題を考えるとき、注意しなければならない点がいくつかあります。まず、「技術がうまれてから、問題を考える」のではなく、研究開発の初期段階からその正の面・負の面を考えていく必要があります。
また研究成果の社会実装の問題を考える際には、私たちの社会を構成する多様なメンバーとともに議論することが欠かせません。「私たちはどのような技術なら受け入れられるか」という議論は、「私たちはどのような社会のあり方を望んでいるのか」という問題と不可分です。もちろん、私たちの社会がどうあるべきかという価値に関する議論に一定の答えを出していくのは非常に困難です。しかし、困難だからといって何もせずにいてよいわけではありません。こうした価値に関する困難な問題に対しては、さまざまな人がさまざまな立場から対話し、それぞれが応答しあい反省しながら考えていくしかありません。

この「脳科学ひろば」では、脳科学研究者が現在進行中の脳科学研究について市民の皆さんに伝え、その成果をどのように社会実装できるか提案していきます。
皆さんには、研究者と一緒に、その研究成果の社会実装に伴ってどんな問題が起きるのか、 一緒に考えていただきたく思います。

※新しい研究やイノベーションについて、その開発の初期から利害関係者が協働しながら
社会的価値などを議論していく取り組みをResponsible Research and Innovation(RRI)と言います。

RRIについては、たとえば次をご参照ください。

  • 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
    「ELSIからRRIへの展開から考える科学技術・イノベーションの変革
    -政策・ファンディング・研究開発の横断的取り組みの強化に向けて-」
    https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2021/RR/CRDS-FY2021-RR-07.pdf
  • 標葉隆馬『責任ある科学技術ガバナンス概論』(ナカニシヤ出版、2020年)